自分は見た/んなこたーない
 
て、それがとても気に入った。

 求人広告に目を通すだけでも、あとには重苦しい疲労感が残った。それが済むと特にすることもなく、部屋でじっとしているほかに仕様がなかった。思い出したようにハート・クレインの詩の翻訳を始めたりもしたが、それも長くは続かなかった。ぼくは彼の詩の翻訳を「余業のすさび」と規定していた。
 しばらく壁の一点を凝視していると、ぼくは自分が仕事を見つけようとする意欲を完全に失ってしまっていることに気がついた。それは採用通知を手にしたのと同じくらいに確定的であるよう思われた。

 失業保険申請の手続きのためには一度職安へ行く必要があった。
 プラットホームで電車を待ってい
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