自分は見た/んなこたーない
目を覚ますと、ぼくは全裸で浴槽に横たわっていた。身震いするほど寒かった。ぼんやりした頭で浴室を見回すと、急にそこが見覚えのない場所であることに気がついた。無理な体勢で寝ていたせいか、起き上がると身体の節々が痛んだ。
服は脱衣所のかごに丸められてあった。酔っ払って服の上から吐き散らかしたに違いなかった。汚れた服を着る不快感には耐え難いものがあった。ポケットを確認すると昨夜の状態のままで、なくしたり盗まれたりしたものは特にないようだった。
身支度を済ませると、次の行動を決断するのに少しの間躊躇した。時刻は午前十時を少し過ぎたところだった。
廊下に出ると、すぐ左手に玄関があった。そこにぼく
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