「 椅子に座る老女 」 /
服部 剛
灰色の壁に囲まれた
音の無い部屋
黒い衣を身に纏(まと)い
「死」を決意した病の老女
一点をみつめ
椅子に腰かけている
( 左手の薬指に今も鈍(にぶ)く光る
( 結婚して数年で世を去った
( 若い夫に贈られた結婚指輪
「
壁に掛かる
黒い額縁に囲まれた
故郷の懐かしい情景
煉瓦(れんが)造りの町並みに夜は更けて
闇に灯るいくつもの家の窓明かり
食卓で向き合う若い母と幼い息子の影
」
( あれか
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