「 月夜の照明 」 /服部 剛
 
子供の頃  
両親のあたたかなまなざしに 
まもられて 
幸せはいつも 
「 そこにあるもの 」 
だった 

やがて大人になり 
自らの手を伸ばし 
掴(つか)もうとした 
幸せはいつも 
「 手から流れる透明な砂 」 
になっていた 

もう 
寂しく震える腕を 
差し伸べることはしまい 

生ぬるい 愛 を求めては
無様(ぶざま)に躓(つまず)く  
わたしの胸のすき間から 
弱々しくたち昇る 
( 煙の人影 ) 
この手に握り潰(つぶ)し 
わたしは 
ゆっくり立ち上がる  

いつのまにか 
色褪せていた日々を 
もっと走らねば 

背後からも 
忍び寄る  
( 煙の人影 ) 
振り切って 

夜の帳(とばり)に消えかかる 
闇のゴールを駆け抜けた時 
月の光のまなざしは 
地に倒れ 
白い息を漏らす 
わたしのまわりを 
夜空から そっと 照らすだろう 







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