十年間/MOJO
 
 その頃、私は建築請負の会社の現場代理人として働いていた。
 朝の六時半に目覚まし時計を合わせ、車で出勤する。途中、牛丼屋チェーンで納豆の朝食をとり、タバコに火をつける。ヘルメットを被り現場に入ると、職人の出面(人数)を確認し、会社に報告する。工場からの搬入物があるときは、トラックの誘導などもする。
 建築現場の朝は早い。いかつい男たちのラジオ体操が終わると、現場監督がその日の訓示を垂れ、職方たちは各自の持ち場へ散る。私の仕事は工事の進行が工程に沿っていれば何もすることはない。しかし大抵の場合、進行は工程より遅れていた。遅れる理由は様々だが、概ね工場からの製品に不備があることによる。現場監督か
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