セレモニー/結城 森士
 
透明な流れやその匂いが
蒼い夕暮れに僕を連れて行ってくれる いつも
繊細な指先やその動きが
貴方の人生を物語っているように思える
目の前で貴方がグラスの水を飲む時に
水が煌めいて波を打っていたこと
点滅する貴方の涙は
僕をもう一度此処へ連れてきてくれるものだと信じていた

蛍光燈の柔らかい光が外の景色と反比例し始める頃
僕達はお互いの物語を聞くことをやめていた
沈黙の間はベランダを見つめている
僕達の心はお互いに暗くなっていく
炎が溶けていくように ゆっくりと 炎が空に溶けていくように

感情はいつまで経っても起動しなかった
窓硝子がゆっくりと割れていく 妄想なのだ
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