脇 役/沢村 俊輔
誰も ぼくのことを呼んではくれません
でも 一番初めにでていきます
けっして 前座のつもりはありません
なるほど メニューに僕の名はありません
ときどき 僕をいらないという人もいます
だけど ぼくは補欠のつもりはありません
毎日毎日 違う姿ででています
春夏秋冬
相手をじっと観察しています
ずっと試行錯誤しています
それは
旬だったり
年中行事だったり
土地柄だったり
客層だったり
酒の種類だったり
いろいろな事を考えてでています
メニューに書かれたどの奴らよりも
世の中のこと
仕事のこと
一生懸命考えています
だから 呼ばれなくても
一番初めにでることを許されているのです
それほど 信頼されているのです
それほど 上手に使われているのです
ぼくはメニューに載せてもらえません
ちゃんとした名前もありません
唯の酒の肴です
戻る 編 削 Point(5)