追憶/山中 烏流
 
使い古した深夜帯から
紫色の空気が、香る
気付かれないようそっと
あたしは息をする

古くなった声は
黄色く傷んで
吐き捨てられていく


あの日の家はどこなの
あの日の声はどこなの
あの日のあたしはどこなの



無い物ねだり
ループ&ループ



鍵をかけた扉には
まだ、早朝の香り
傷にならないように
あたしはそっと、壊す


(あたしからは)

(まだ)

(紫色の、かほり)


宵待ち月と朝焼けの下で
パフュームを使ったなら
紫色は、もう少し
薄くなるのだろうか



神々しく
触れられない、それ



あの日の夢はどこなの
あの日の空はどこなの
あの日のあたしはどこなの

失った事にすら
気付きもしないまま


(あたしからは)

(まだ)

(紫色の、かほり)


待ち望んでいる朝に
溶け込めない事を知った日に
そっと、パフュームを
吹き掛けた



そして、
あたしはまだ

0:00で手を振っている。
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