聞かれないことに答えるひと/んなこたーない
 
今までに聞かれたことはもちろん、今後聞かれることもまずないだろうが、
もしも、好きな詩人は誰かと聞かれたら、ぼくは真っ先にハート・クレインと答えるだろう。
彼のような難解、というよりも下手糞な詩人に入れ込んでしまったのが運の尽きで、
というのも世の中に下手糞な詩人はなかなか存在しないのである。
「橋(The Bridge)」は彼が成し遂げた偉大なる失敗であり、
冗長で読み通すだけでもずいぶん骨が折れるのだが、それでも読むたびにぼくは何度でも戦慄してしまう。
彼に関する評論や研究は翻訳がほとんど進んでいないので、そちらに目を通すのもこれまた大変で、
もっと英語が堪能であったら、とよく思
[次のページ]
戻る   Point(2)