やがてぼくらは輪郭のない自由になる/ワタナbシンゴ
エムと出会ったのは、ちょうど海の標識が立つ四つ角を曲がった交差点だったと思っているのは記憶違いなのかもしれない。御影石が欲しいというので三つ拾ってあげたところまでは、覚えているのだけれども、その先は朝だったような気もするし、エムはしきりに夏の匂いをうれしがっていて南の国には夏しかないという始まりもなければ終わりもないお話しをひとつしたから、たぶんぼくは少し酔っ払っていたのだろう。
円周に加速する肉体と、垂直に引き寄せようとする宇宙の孤独がたたずんでいる海辺の県道。バスに乗りながら彼らを見送る夕暮れ時、ぼくは無性にエムに会いたくなる。淋しさを偽って過ごす世界は何色だろう?きみの眼に
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