八日月/千波 一也
 


つゆのおもてを奏でるような
かすみの語り部、
八日月


 白々しくも、
 ゆかしいものです


枝のあいだを
いそぎもせずに
はかなさをなぞるには
聡明すぎる、ような


 老いも若きも
 灯りでしょうか

 過ぎゆくものは
 いくつかぞえても
 わすれてしまいます

 いいえ、
 それゆえの
 流麗なのかも知れません


呼び声にしたがって、
とどかぬことを
腕は続ける

だれか、
それをたやすく哀しむだろうか


 やがての季節は
 いまも昔も変わりなく、

 わずかな寄る辺を
 禁じるすべ、が
 ときでした

 あらゆる姿の


こぼれるひかりの
その波に、
舟は舟から
さらなる舟へ

まぼろしではなく
けれども綴れぬ、
夜のみなもと





[グループ]
戻る   Point(10)