「 お洒落なペン 」 /服部 剛
昨日 美術館で買った
イタリア製のボールペン
褐色の木に刻まれた
( The Paper Pen )
なめらかな筆記体の文字
金色に光る ペン先 と 頭
「 さぁ、これで何を書こうか 」
白紙のノートを机に開いて
紙の上にペンを滑(すべ)らせると
インクが出ない
しゃかしゃか と
ふっても
机にたたいても
ペンを滑らす紙の上は
まっしろけ
「 なんだこりゃ
使いものにならんなぁ 」
「 400円も、出したのに 」
ぷるぷる と
震える指先で
つまんだペンを投げ棄(す)てようと
手を振り上げる
と
使えぬペンに
日頃 口先ばかりでぐうたら者の
自分の姿が重なった
「 しかたないなぁ・・・ 」
眉(まゆ)をしかめてポケットに入れると
ペン先が きらり と光った
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