蕾/海月
 
最後の月日を重ねる 
砂時計の砂は残り少なく 
瞬きの間で全てが終わってしまう 
緩やかに全ては前に行こうとする 
私の背中を君は軽く押し 
踏ん張りのない私の足は前に出て 
君の少しだけ先に出た 
ふり向けば、君はいない 
君の声や顔や感触や温度も最後が来る 
解っていたけれど何も出来ない 
あの日は幼い愛仕方しか知らず 
温もり(心)を感じ(通じ)合おうとせず 
直ぐに別々の体に戻った 
遠くで流行の曲が流れて 
歌詞も曲調も解らない 
だけど、心地良かった 
隣を歩く人はいつかは違う歩幅に変わる 
その時に自分も歩幅を変えてはいけない 
誰かの言葉が胸を過ぎった 
涙を流した所で何も変わらない 
涙を流せば忘れずにいられる 
少しだけ右手が軽い 
隣からは足音が聴こえない 
優しい月明かりに包まれ 
聖地の円を描く 
風はやわかく吹き 
桜の葉が揺れた 
蕾は花咲く事無く散り落ちた
現実は冷たく優しく私達を迎えた
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