おはなし 1〜50/Monk
(1)
僕は眩暈をおこし倒れゆく途中、眩暈の原因はこの部屋の絨毯の模様がどうにも見慣れない形に変わってしまったからだということに気づき、しばらく斜めになったまま考察を続けた。
(2)
恋人が「あなたの考えていることはすべてわかるわ」と言うので僕はずっと黙っていると原稿用紙に黙々となにか書き始め、最終的に千枚にもなった原稿は出版され世の中で絶賛されているのだが僕の住む町には本屋が一軒もない。
(3)
激しく喉が渇きやっと見つけたトマト農場はフェンスで囲われており、僕はなんとか切れ目を見つけ必死に手を伸ばす一方でフェンスの中で生まれ育った少年は憎しみをこめ
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