( ピザ屋 Dio にて ) /服部 剛
「Le Poete」(詩人)
という名の店が姿を消した後
新装開店して「Dio」(神)
という名のピザ屋になった。
消えた、前の店と同じく
ピザ屋は毎日空席だらけ
カウンター内に立つ男と
レジ横の椅子に坐る女と
若いふたりは日がな
首を伸ばして客を待つ
今夜初めて
店のドアを開いたら
客は僕ひとり
ピザが運ばれるのを待ち、
頬杖をつく。
( 貧しい暮らしをするふたり
( 姿を消した前の店の夫婦
( だいじな女(ひと)が傍らにいない僕
ふっくら美味しい
手づくりピザを食べ終え
顔を上げると
目の前は
鉢に植えられたベンジャミンの木
店内に流れるノラ・ジョーンズの唄声に
あわせるように葉群の音符をゆらし
うつむくと
いつの間にか
なにかを抉(えぐ)るような爪は伸び
かうんたーの
すみにおかれた
とまらない
めとろのーむの
ふりこがゆれて
ぼくは なぜだか
ひとみを とじた
戻る 編 削 Point(11)