( ピザ屋 Dio にて ) /服部 剛
 
「Le Poete」(詩人) 
という名の店が姿を消した後 
新装開店して「Dio」(神) 
という名のピザ屋になった。 

消えた、前の店と同じく 
ピザ屋は毎日空席だらけ 

カウンター内に立つ男と 
レジ横の椅子に坐る女と 
若いふたりは日がな 
首を伸ばして客を待つ 

今夜初めて 
店のドアを開いたら 
客は僕ひとり 

ピザが運ばれるのを待ち、 
頬杖をつく。 

( 貧しい暮らしをするふたり  
( 姿を消した前の店の夫婦 
( だいじな女(ひと)が傍らにいない僕 

ふっくら美味しい
手づくりピザを食べ終え 

顔を上げると 
目の前は 
鉢に植えられたベンジャミンの木 
店内に流れるノラ・ジョーンズの唄声に 
あわせるように葉群の音符をゆらし 

うつむくと 
いつの間にか
なにかを抉(えぐ)るような爪は伸び 

かうんたーの
すみにおかれた 
とまらない
めとろのーむの 
ふりこがゆれて

ぼくは なぜだか 
ひとみを とじた 






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