夢/北野つづみ
 
せめて夢のなかくらい
思い通りにならないか

閉じた扉
切れたワイヤー
エレベーターで落ちていく夢を
いくども 見た

地上に衝突する瞬間の
痛みは思い出せない
もぎ取られた浅い眠りに
激しく体は鼓動する

翼を広げたい
硬く強張った両腕を伸ばし
日常の重力から逃れて

空を仰ぎたい
伏せた眼を真っ直ぐにして
心を透明にしたら
明日が見えると信じたい

落ちていく
この世界を止めるんだ

せめて
夢のなかくらい


二〇〇六年十二月十五日

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