追憶/渡 ひろこ
ベッドサイドの淡いスタンドの灯りが
ほの暗い部屋の一角を照らしだしている
窓から見下ろす都会の夜景は
今の私には冷たいほど綺麗に
無表情な横顔で輝いている
独りには慣れているはずなのに
寒々としたホテルのシングル・ルームは
何かしらもの哀しさを感じずにはいられない
「だから出張はイヤなのに・・・」
仕事だからしかたがないけど
いつも侘しさが付きまとって離れない
ホテルの小部屋というシチュエーションが私は嫌いだ
丁寧にベッドメイキングされた
ピンと張ったシーツの上に寝転がり
白い天井を見上げる
一点を見つめるうちに脳裏をよぎるのは
恋しくても戻れな
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