新宿はさようならと言った/soft_machine
東京で暮らすために
新宿に降り立った日のことを思い出す
長旅、といってもたった半日だ
タンクトップをねじるくらいで
音楽をつめこんだ鞄を
肩に食い込ませ
その日を酒を探して歩いた
福岡で暮らし直すために
新宿でバスを待ちながら
あの日一緒だった兄貴はいなくなった
増えた荷物は遅れて届くだろう
父親を探すこともできなかった
この街のどこに
墓場があるのだろう
まばたきはなみだを弾いて
眼鏡に色をつけてゆき
いくつか曇る
感情とは異なったなみだ
なみだは笑いながら
なみだ目はあきれながら
ビルの流れを感じている
さくらのにおいが
すこしだけれど
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