ある小夜曲/ふく
透き通った黒に、私は何の用意もしていませんでした
立春の冬はまだ夜にあり、凍えるには充分
涙
それはそれは同じような線を辿り、胸まで達する程の
音は
この夜があまりにも深いので、音まで飲み込んだ様
涙は無くならないのね
とめどないからかしら
昼の優しい顔
夜は煌々と
白くて眩しすぎて、ごめんなさい
目の前の景色すら
涙が伝い落ちるのは
身体があるからなのね
私を、思い出させてくれるのね
曲が
曲が聞こえてくる
濡れた髪は涙の匂いがしました
凍える風は、知らぬふりでした
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