海辺の夜/三条麗菜
 
あんな色の
月の光に照らされては
わたしたち
色彩を失っていくばかりの
ようですね

あんな色の
夜空に月を浮かべられては
わたしたち
月以外にお友達が
いないみたいですね

あんな色の
海にさざなみを立てられては
わたしたち
甘いささやきさえも
届かない風に変わりそうですね

海辺の夜は
人魚の奏でる笛の音を聴こうと
わたしたちのような二人が
手を取り合って
集まってきます

もう何百年も生きている人魚に
夜明けの来ない魔法を
かけられるために
月の光をたよりに
集まってきます

わたしたちは
この夜になりましょう
色彩もお友達も
[次のページ]
戻る   Point(12)