願いごと /服部 剛
 
丘の上の叢(くさむら)に身を埋(うず)め 
仰向けに寝そべると 
空は、一面の海 

宙を舞う 風 に波立つ 
幾重もの小波(さざなみ)を西へ辿れば 
今日も変わらぬ陽は沈む 

見渡すと 
ひとつ、ふたつ、灯る 
無数の街明り 

家々の台所から 
包丁を手にした後ろ姿の妻が
まな板に葱(ねぎ)を刻む音 

帰りの電車の座席に座る 
くたびれた鞄を抱えたまま眠る夫や 
銀色のドアに凭れて立つ 
白球を包んだグローブを手にはめたままの息子を乗せて 
わが家のある街へと吸い寄せられるように走る
線路上の輪音 


( 陽が暮れか
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