願いごと /服部 剛
丘の上の叢(くさむら)に身を埋(うず)め
仰向けに寝そべると
空は、一面の海
宙を舞う 風 に波立つ
幾重もの小波(さざなみ)を西へ辿れば
今日も変わらぬ陽は沈む
見渡すと
ひとつ、ふたつ、灯る
無数の街明り
家々の台所から
包丁を手にした後ろ姿の妻が
まな板に葱(ねぎ)を刻む音
帰りの電車の座席に座る
くたびれた鞄を抱えたまま眠る夫や
銀色のドアに凭れて立つ
白球を包んだグローブを手にはめたままの息子を乗せて
わが家のある街へと吸い寄せられるように走る
線路上の輪音
( 陽が暮れか
[次のページ]
戻る 編 削 Point(15)