穏やかな孤独/八月のさかな
 
きみにメールをしようとしたけど
なにを書けばいいのかわからなくて
白紙のままの作成画面をみつめた

液晶がにじむ

ほんとうはずっと
信じていたかったんだ
ばかみたいに
おとぎばなしみたいに
裏切りなんて別世界のできごとのように
いつまでも冷めないお風呂につかるみたいに
そしてふやけた手のしわまでいとおしむように
信じていたかったんだ


きみの嘘やごまかしや
欲望やちょっとした好奇心
それらはまだ すこうしずつわたしを傷つけるから
完全なる理想を諦められる日まで
わたしは夜毎になくのだろう
そして涙がとまっても
どこまでも穏やかな孤独は
きっと 生涯わたしから離れない
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