「 写真の女 」 /服部 剛
父と母と少年と
3人家族に囲まれた
座席の隅の窓際で
車窓に流れる景色を見ていた
( あいするひとにさられたばかりのわたしは
( すっかりかたもそげおちて
( めのまえにみをよせる
( かぞく というなの こうふく が
( てのとどかぬ ゆめ のようにおもわれた
車窓は
いくつもの田畑を過ぎ
サッカー少年達がボールを追う校庭を過ぎ
賑(にぎ)わう街の人波を過ぎ
「 あ、富士山・・・ 」
と隣に座る、母の一声。
3人家族は
揃(そろ)って顔を
窓外に向け
( さみしいわたしもかぞくになって
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