罪と罰/海月
 
異国の国で幼い君の横顔に絶望を観た
屈託のない瞳の輝きは希望に満ち
それが叶わぬ事を私は知っていたから

荒れて行く地に咲く花はなく
破れかけの本でしか知る他はない

私は君を背中越しに去る
私の服を君は小さな指で引っ張り
行かないで
と縋り付く君の姿が心を締め付けた

明日が来るかも解らない
今日で終りかも知れない

薄い唇が微かに震えた
生温かい風が吹き
雑草の揺れた音が聴こえた

君を抱く事を心の何処かで恐れた
君に優しい嘘を吐く気がしたから
今は小さき汚れた手を握り締める事しか出来ない

「さようなら」の意味を異国の君が知る訳はない
私はお礼の言葉と君の言葉で呟き
君の手を優しく外した

あれから数年が経ち
君の事は忘れた事にしていた
そんな風に思わない
と生きていけない気がした

今も手には君の温もりが沁み込んでいる



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