感情形容詞の人称制限について/小池房枝
 
「彼は悲しい」

これは詩の言葉です

「わたしは悲しい」

これとは違って

「彼は悲しそうです」
「彼は悲しがっています」

「彼は悲しいそうです」
「彼は悲しかった」

様子ならば見えるし
過去ならば伝聞がある

でも今、この瞬間の心中を
ひとが言い切ることは出来ない

「彼は悲しい」

これは、詩の言葉なのですよ

国語文法ではなく
日本語文法として右肩にアステリスク*印
非文なのです

ひとのこころの中は見えない

ほんのしばらく前までは日本語にあった
感情形容詞における人称制限の話です
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