歌う絵画のように/雨露 流
 
目の前にあるのは
二次元に描かれた幻想でしかないのだが
見る、という視覚に限定された感覚だけでなく
描かれた全ては私の脳に語りかけてくるようだった

ルーベンスの絵が見たいと呟いた私は
しがらみに翻弄された少年の末路と
瓦礫の山で拾った人形の姿を重ね合わせた


感覚だけで生きるのはひどく困難だと思う
気付いたら常識や偏見に感覚が麻痺していく


端的な言葉で紡がれた物語の行間に潜んだ
歪な空白から読み取った情景を
筆ではなく自らの言葉で描きたい


絵画と詩、その可逆性を実現したいと
能力の限界を知らない夢想家の僕が呟きながら
薄明りに照らし出された道を歩く
誰でもなく自分自身が選んだ道

蝋燭の炎のようにゆれる希望の光
腕を幾ら伸ばしても届くことはないのだろうか

重ねる月日の中で僅かでも望みに近づきたい

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