無知なる夢の中/T’s
自ら衣を薪とし火を焚き続けた
マタギは寒風吹き込む洞穴の中
歯を震わせそれでも女子を守る為に
マタギは歯を食い縛り自らを傷付け
飢えと寒さに向かい合った
何時しか女子の寝息が消えている事に
気付いたマタギはついと視線を向ける
女子が居た筈のその場所には一頭の狐
狐に化かされたと知ったマタギは鉄砲を
狐に向けた……
夜が明けると
雪は止み 日差しは雪原を煌かせる
マタギは狐の体を抱締めていた
狐はマタギに寄り添っていた
二人の姿は
冷たい氷の中に閉じ込められていた
雪の中の新芽達は
その姿を知らぬまま
温かい夢を見ている
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