( 空ノ声 )/服部 剛
 
平日、日がな部屋に篭り、息が詰まりそうであった。 
暗い部屋の雨戸の隙間から射す一条の光に呼ばれて、
ベッドから身を起こし、外へ出る。 


( 日を浴びて、空を仰いで、息を吸い込む ) 


平日の午後というものはこんなに穏やかであったろうか。 
水面(みなも)の煌(きらめ)く川のせせらぎは絶えず流れていた。 
家々の軒先から活気の有る工事の音が聞こえる。 

見上げれば、バルコニーに立つ主婦は、
洗濯物を干している。 


( 吊るされた、家族四人の普段着は、
( 緩やかな風に揺らめいて、
( 干された布団は、ましろく光り。 


早春の、
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