アンソロジーな吐息/大城 小町
 
四角い硝子管の向こうで

きっちりとしたいい年のおじさんが言う

「地球が壊れています」と

隣で彼女が蜜柑を皮ごと貪っている

壊れていると思った

翌日 置手紙を残して彼女は消えた

南極の氷が溶けるように

「先が見えない」の文字を残して

僕は

少し体温が上がり

少し涙もろくなり

少し心が沈没した

日本が沈没するのはまだまだ

何百年も先の事らしい

きっちりとしたいい年のおじさんが言っていた

外は雪の代わりに桜が舞っている










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