コスモス/北野つづみ
秋はゆっくりと来ていた
朝夕の風を
冷たくすることから始めて
草花の種を気まぐれに弾き
ななかまどの実を
少しだけ赤く染めてみた
けれども空はまだ若い
夏の面影を残していた
梢には鳥が止まっていた
甲高い声で鳴いていた
空気を裂いて音は伝わった
自分の居場所を
確かめるように
遠い 遠のく
周囲の音が 風景が
揺れる 揺らめく
薄桃色の花びらは羽
このまま空に
吸い込まれそう
偽りのKosmos
とりあえずは生きている今日
明日につながる重力を
心の中に探してる
鳥は鳴く
鋭く空気を切り裂いて
今しか見えない
と 鳥
今しか知らない
と 鳥
梢の上で鳴いている
少し黄色くなりかけた葉が枝の先で
風に揺れている
2006.10.20
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