石塔 /服部 剛
ぼくはきみと
ささやかな丸石をつみあげたい
忙しさに追われながら
過ぎ去ってゆく日々のなかで
( それは夜毎の厨房で
( まな板の上でたまねぎの音を刻む
( 妻の後ろ姿
( それは日曜の午後に
( 昼寝から起きて掃除機をかける
( 夫の屈んだ姿
ぼくはきみと交互に
色の無い丸石をつみあげたい
どこまでも、高く。
ふいに吹きつける風に
あやうく揺らぎながらも
不思議と崩れない背骨のような
いつか、ぼくときみの間に、高く立つ、人知れぬ石塔。
遥かな空を指す石塔
の頭上からそそがれる光
地上にひろがる陽だまりに
伸びる三っつの影
重なる。
ぼくと きみと 石塔の
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