群像/田島オスカー
もどかしさを知らなかった頃
いつだって笑っていられたような
そんな幼い頃
僕はまだうんと子供で
いろいろな大きさの虚像を見て育った
何も知らない方がいいのだ、と
父親が言ったのか
母親が言ったのか
何も見えないように
僕の目に添えられた手のひら
うっすらとした体温が美しいと思わせる肌
誰のものだったのだろう
何かが永遠に旅立ってしまったような
そういう浮き立った輪郭ばかり
僕のそばには転がっていた
助けておくれ、かならず、
父親が言ったのか
母親が言ったのか
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