温もり/海月
 
狂おしい程に君を抱きしめた 
背骨のが歪み軋む音が聴こえた気がする 
優しく静かに心地良い音色 
懐かしい思い出ならば色が落ち 
白と黒と茶色で動いている 
友は手を振りながら私の名を呼ぶ 
蜃気楼の様に手を振る人は歪んで消えた
夏になると庭に小さな砂の山を造り
そこに金魚を埋めていた 
父にせがみ必ず金魚掬いをして 
翌日には当たり前の様に死を迎えていた 
死者には花を捧げ 
生き残った者は祈りを捧ぐ 
夕立の庭は沈み 
少しだけ小高い砂の山は潰れ始めていた 
明日の朝には平らになることだろう 
そこに何もなかったかの様に 
萎れた花が見るに耐え難い 
温もりを求めて抱き合った
少しでも生きていると理解したかった
優しく僕は君に想いを流した
死を待つだけの身に君の温もりが沁みた 
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