美しいもの、きみがうつくしくみせるもの/八月のさかな
 
きみが森にはいれば
木々は青さを増し
きみが空に手をのばせば
雲はきみに近づこうと雨になり地におちる
きみが猫にふれれば
その三毛猫は、2丁目界隈の王になる

海がみたい、君がときどきそういうから
湘南の海は黒ずむことを厭わずいつもそこにあるのだし
春がすき、でも秋もすき、なんてつぶやくから
四季はそれぞれにはりあって輝きをみせる

きみが悲しみに咽び泣けば
とおくの山がやまびこに見せかけてきみまで届こうとし
きみがにっこりとしあわせに笑えば
世界じゅうの地雷が いのちを奪うことを恐れる

きみがためいきを吐くと
その白い息で世界が清くなって
すべてが透明になる

今日も世界はそうやって、
きみとともに 
きみのなかに消える
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