夜明け前 〜老婆の言霊〜 /服部 剛
 
た 

弱々しく腐った魚の魂よ 
翼を生やし、日常の海を翔べ 

無表情な黒目に 
細い血すじを、張り巡らせよ 

( お前はこれから 
( 日々出逢う一人ひとりに 
( 四つ葉のクローバーを手渡す旅に出る 

山々の上に、朝陽が昇った。 
照らし出されたましろい世界。 
姿を消した、いくつものしゃぼん。 

( 夜明け前の老婆達の言霊 
( あれは宙に舞う風雪の向こうに 
( 淡くともる、灯火だった。 

新たなる夜明け 
列車は雪原に埋まる線路を貫くように 
終着地へと加速する 

一粒の熱い涙、頬を伝う。   







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