種子の祈り/A道化
 
いました、あとは
春ならではの冬を、頬の内側で耐えるつくりの
苦い種子のようなこのかたち、それでも生きているかたちから
あなたへ、あなたへ、あなたへと発芽し間違えたくちびるの
無音で震えた春、無音で体温した春のことを、既に申し上げた、
既に申し上げたのだから
あとは





あとはもう
申すことはありません
プラットホームの
コンクリートに近づいてわたしは
苦い種子のようなかたちの体温で
わたしは、それだけで祈り
ああ、体温、それだけを用いて
わたしは音も無く、
祈り、


2007.2.5.
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