回顧/ポッケ
 
十月。


真っ暗になるまで遊んでいたぼくを

心配した母さんが迎えに来てくれた

手を引かれて家までの帰り道

いつも通る高橋さんちの玄関に

小さなだいだいの

無数に落ちた花びらが

ぼうっと光っていた

絵本で見た

まあるく漏れるあたたかい窓明かりのようだった


ぼくは目が離せず

母さんの手をしっかり握りながら

漏れる明かりが見えなくなるまで

何度も何度も振り返って

目に焼き付けた


あのときに僕は

魅せられたのだろう

偶然と一瞬のはかなさに

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