回顧/
ポッケ
十月。
真っ暗になるまで遊んでいたぼくを
心配した母さんが迎えに来てくれた
手を引かれて家までの帰り道
いつも通る高橋さんちの玄関に
小さなだいだいの
無数に落ちた花びらが
ぼうっと光っていた
絵本で見た
まあるく漏れるあたたかい窓明かりのようだった
ぼくは目が離せず
母さんの手をしっかり握りながら
漏れる明かりが見えなくなるまで
何度も何度も振り返って
目に焼き付けた
あのときに僕は
魅せられたのだろう
偶然と一瞬のはかなさに
戻る
編
削
Point
(4)