本/サナギ
向こうからすげえでかいものが歩いて来やがった
そのすげえでかいものが
どう見たって
図書館だ
ツタの生えた陰気くさい外壁
入り口はまあまあきれいだ
ずらっと並んだ棚には本がぎっしりつまって
受験生らしき奴らは蛍光灯の下で勉強
床には絵本を読む子供
椅子には眠りこける老人
紺色スーツの楚々とした職員がカウンターで判子を押している
それを背負っているのがまたやせっぽっちな男で
驚いて口もきけない俺に話しかけてきた
やあどうです本でも
どうですと言われても
こっちはそんな暇も趣味もねえ
一体どうしてこれを背負う羽目になっちまったんだと聞くと
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