春風/海月
 
他人の痛みを分かち合おうとする
言葉で幾ら表しても
それは妄想の痛みでしかなく

君と僕が料理中に包丁で指を切る
痛いと言う事には変わりないが
痛みの深さはそれぞれ違う

君の優しい仕草が僕を傷付ける
やわらかい胸が当たる度に
気分が堕ちていった

僕の優しい仕草が君を苛立たす
冷静な僕をいつも睨み付けて
僕が見ると視線を外す

息詰まる部屋の中で消し忘れた
テレビで深夜の通販番組が始まっていった
ジョーク混じりで司会者が商品を紹介する
その度にお客もゲストも驚いていて
見るに耐え難かった
ただ、消したら消したで辛くなる
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