しあわせのメロディー/Rin.
夢よりも一歩、現実に近かったから
振り返ることはたやすかったはずなのに
もうお風呂にはいった?
という彼の、決して難しくもない問いに
眠りに引き込まれるにまかせて
わたし、答えなかった
ふとそばで寝息をたしかめるかのような
気配を感じてから、彼の
温度はバスルームへと遠ざかって
わたし、こころのなかでごめんと言った
シャワーの音がけっこう豪快で
いまさら声に出しても届かないかな
なんて思って寝返りを打ったら
シャワーの音が
ぴたりと聞こえなくなった
ぴたり、と
とめどなく溢れていたものが
ふいに止まって
無音の闇が
わたしを
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