【小説】水色の下/R
水色の下
水の中が好き。
人類の起源は海であるし、そうでなくとも生まれる前、羊水の中に私達は漂って生を受けた。
生温い水の中に漬かって、
昔見た近未来アニメのように、心も体も水の中に溶けてしまって、
そうしたら、きっと孤独を感じることなんて、ないのに。
私の中に誰かが漬かってくれたなら。
夏の日。
教室の中で私は授業を受けていた。
クーラーが利いて、乾燥して分子が離れて、
日本の夏なのに酷く不自然な空気だった。
「いい?原腸胚には初期と後期があって・・・」
黒板を見ると、沢山の丸い、細胞の模式図が隙間無く張り付いて、
「生」を構成しようとしている図が描
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