蓮華/海月
 
意識しているという事である
嫌な事ほどに思い出そうとしない

忘れるのが怖いから思い出そうとする
君と一つになるには思い出の中だけ

当たり前ほどに怖いものはない
右手で鉛筆を持てること
左手で紙を押さえること
何の障害もなくに動かさせている
実際に障害が出来たら怖い?

誰かの死は直接的に関係なくても悲しくなる時もある
繋がり合う心の中で現実に背を向けた

君と似た人を抱いた
化学薬品独特の風味がした
機械が擦れ合う様な音がした
不味い料理を一気に流し込み
吐き気を覚える感じに似ていた
罪悪感で首が締め付けられた

それ以来、君以外の人は抱けなくなった

濡れた蓮華の地面の隣に書き家路を辿る
雨はいつしか止み
僕の後ろには月が作り出した
長い影が伸びていた

微かにアスファルトから甘い匂いがした
それは蓮華(君)の匂いに似ていた



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