トイレスリッパ/竹節一二三
話したいことがあるんだ
君は恥ずかしげにわたしにそうささやいた
トイレスリッパを突っかけて
ゆっくりと橋をわたる
はばひろい川の橋は坂が急で
調子の悪いわたしの体を
いたわろうともせず
花びらがとおりすぎた
坂をおりさらに階段を下りて橋のしたへ
はなびらは雪のように舞い
わたしの呼吸をあやうくする
雪が降ると息が出来ない
そう伝えていたはずの君は
くるしそうなわたしをみない
トイレスリッパが
しろいはなびらを踏みにじる
黄色いタンポポの花にさえ気づかないのか
踏み
爪先で土をとばす
靴下が汚れる
土の汚れは落ちにくいのに
わたしはわたしが洗濯するわ
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