水辺の騒然/田島オスカー
 


満月の夜に 半ば無意識に泣いていると
思いのほか疲れる。 昨日の晩も、また。

うす暗い部屋になど居たくもなかったけれど
なにせ この部屋の電球はもう切れてしまったので
卑しくも眩しい月明かりに助けられて
自分の爪先に目をやる 視線がこぼれる

そして、気付けば泣いていたのだった
踏み場など無い部屋に 唯一あった己の爪先の居場所に
おかしいほどに 安心して

安心に涙すると もろくなる。 生き物は、恐らくみんな。
卑しくも満月に照らされて 闇などは、怖くて
そして居場所を 自分を探すのに張りつめて
見つけた安心感に 負けてしまう
そして涙、疲れ。
昨日のあれは夢だったのかしら、とも思ってしまう。


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