松籟その2/あおば
退屈を履いて河原を歩いていたら
跳びハゼのような小魚にであった
淡水だからヨシノボリかもしれない
深い溜息をついて老人が河面を眺めている
もう余命幾ばくもないのに
溜息をつく余裕があるなんて
おかしなことだと思う
ヨシノボリを捕らえて
都会の料亭に売っている人たちが
このごろは数が少なくなって
捕まえにくくなったと
嘆いている
河川改修が進んで
洪水が起きにくくなった河が運ぶ堆積物の減少で
美保の松原が痩せていくと聞いた
美しい河の犠牲となった松原には
羽衣の松も生えていて
風が吹く度に妙なる調べを奏でてる
減少する人口を支えている国土が波に浚われ痩せるのを
指をくわえて眺めているのは怠惰というように風が吹いて
跳びハゼが住むところを探しているみたいだ
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