Starbow/佐々宝砂
 
ータが告げる
あのひとの遺伝情報は保存されている
しかしあのひとは再生を望まないだろう
再生されたあのひとはあのひとではないだろう

わたしは悩まない
発狂もしない
最終的な結論はとうに弾き出している

百年前の地球の
もしかしたらもう千年も前の地球の
闇の半球の
海辺で

亜紀という女が(いや そうでない わたし が)
あのひとに告げた言葉を
変えることができるならば
もしかしたらあるいは


わたしはひとつのプログラムを作成する
船内の灯りをすべて消す
ディスプレイも消す

ラムの帆を極限まで広げる
わたしがいつまでもどこまでも加速し続けるよう
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