さんどばっぐ座/服部 剛
 
上司の心ない一言に火が点いて 
職場のちゃぶ台をひっくり返した日
しょんぼり夜道を歩いていると

通り道のボクシングジムから 
ばす ばす と
瞳をぎらつかせたぼくさーの 
ひたむきなパンチの音が聞こえた

むやみに殴られ続けても 
怒りを我が身にすいこんで 
黙って宙に揺れている 

さんどばっぐは偉いなぁ 

ぴいんと張ったひもは 
堪(こら)えきれない痛みにも 
ほどかれることなく
結ばれて 


しょげかえっていた弱虫よ

しんしんと冷える
冬の夜風に身をかがめ 
ぽけっとにつっこんだ
かじかんだ手を握り直し
ひとすじの道の向こうに広がる 
夜空に瞬く四っつの星を結んだ
あのさんどばっぐ座の方へ 

ぜんしんをひとかたまりのこぶしにして

ひらひら と
からかうようにぶらさがる
見えない明日を打ち破れ 







戻る   Point(14)