さんどばっぐ座/服部 剛
上司の心ない一言に火が点いて
職場のちゃぶ台をひっくり返した日
しょんぼり夜道を歩いていると
通り道のボクシングジムから
ばす ばす と
瞳をぎらつかせたぼくさーの
ひたむきなパンチの音が聞こえた
むやみに殴られ続けても
怒りを我が身にすいこんで
黙って宙に揺れている
さんどばっぐは偉いなぁ
ぴいんと張ったひもは
堪(こら)えきれない痛みにも
ほどかれることなく
結ばれて
しょげかえっていた弱虫よ
しんしんと冷える
冬の夜風に身をかがめ
ぽけっとにつっこんだ
かじかんだ手を握り直し
ひとすじの道の向こうに広がる
夜空に瞬く四っつの星を結んだ
あのさんどばっぐ座の方へ
ぜんしんをひとかたまりのこぶしにして
ひらひら と
からかうようにぶらさがる
見えない明日を打ち破れ
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