アレクセイ/和泉 輪
 
重工業集積地域を有する日本海に面した地方都市を、分断するように突き抜ける主要幹線道路国道8号線。その通りにある大型電機店の二階、超高画質薄型液晶テレビの前で私は見知らぬ年若いロシア人と隣り合って同じ画面を見ている。ロシア人はこの街では決して珍しい存在ではない。貨物船に自動車や材木などを積み込み、回遊魚のようにウラジオストクとこの街を行き来する。この街での彼らは寡黙で思慮深く、眼を沈殿させながら大きな体を折りたたむようにして自転車に乗り移動する。だが日本語も英語も話せない。この街にとってロシア人はもはや日常を構成する一部分であり、それと同時にどうしようもなく他者だった。彼もおそらくそうだろう。伸びき
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