寺嶋さん/
※
少女は澄み切った微笑みを春の一陣に乗せると
帽子を両手で押さえながら、地平を臨んだ
、見渡す限り
俯瞰して、魚眼レンズの風景に
映える車椅子の少女と
一頭の、黒い犬
黄色い絨毯の上、遥か遠く
見える筈の無い人影が、一瞬、ぼやっと浮かび上がった
ような、気がした、それは
まだ見え始めたばかりの少女の目に
気付かれることも無く
そよそよと、
風の囁き
誰にも聴き取れない、ひそひそ声
絨毯に呑まれ
やがて来る、夏を呼びに行く
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