置いてきた傘/ku-mi
 
あなたの髪に触れるしずくは
花びらのように
キラキラと咲いて散っていく

あたしもそんなふうに綺麗に映ればいい

住み慣れたはずの町が
やけに他人行儀に感じた
折れた傘が
歩道の脇に捨てられている
風が強かったのは昨日

熱を帯びればやがて雲になり
曇れば雨を気にする
そこでいつも湿気に悩まされていたのはあたしで
夕立の匂いに敏感だったのはあなた
なのにどうして
今日は傘を持ってこなかったのだろう

呼吸が乱れないように
色の濃いくちべにをしてきました
だけどこぼれる言葉は無色でした

いま、ゆらゆらと
にごる空を見上げて
頬を打つあまおとを聞く
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